省エネルギー法の改正だ。
これは地球混暖化防止に関する法律の制定である。
この措置によって、すでにある「エネルギーの使用の合理化に関する法律」が改正され、一九九九年四月に施行された。
産業部門では、これまでの対象企業に加えてエネルギー使用の中堅工場を「第二種指定工場」に新たに指定。
「エネルギー管理員」の配置、それにエネルギー使用の管理記録が義務付けられた。
これまで規制の枠組みからはずれていた中堅企業を取り込むことで、一段の省エネ効果を上げようというのが担いだが、これら企業にとっては下の不況下では新たなコスト増要因となるだけに厳しい。
政府もこの辺の事情を勘案して九九年度の予算要求段階では、省エネ予算だけで前年度要求比二五%増の九百四億円としている。
それにこうした対策が実施されることで、環境ビジネスが立ち上がることも、その一方で期待されている面があるわけだが、そんな未来図が単純に描けるかどうかは未知数。
当面の現実的な対応がどうなるか。
懸念材料とみるむきも少ない。
その理由は対策の直接的な影響を受ける中堅企業がまだ問題の重大さに気が付いていないためだとされており、事態は予想以上に深刻なのかもしれない。
民生用部門に関しても、省エネ法の改正によって住宅の断熱性能の基準が見直されたほか、家電製品についてはいわゆるトップランナー方式が導入された。
エネルギー使用効率の最も高い機器に基準を置き、それ以下は市場から排他されても仕方がないという「非情」ともいえるのがこの方式であり、政府の問題に対する切迫感がうかがえる。
運輸部門でも自動車の燃費に関してトップランナー方式が導入される。
これらの対策が有効であり、かっその効果を大いに上げることに期待したいし、事態がことここに至つては着実に実行あるのみといっていいのかもしれない。
しかし、ここで冷静に現実を見ておく必要がある。
あまりに性急かつ大胆な方策が日本経済を歪ませるようなことがないか、という懸念である。
日本の経済成長は当然ながらエネルギーの消費増大と並行している。
しかし、その中身を見ると、石油危機以降、産業用の伸びがほぼ横ばいなのに対し、民生用と運輸部門が二倍近くになっている。
ということは産業部門の省エネは相当に進んでいることを意味している。
こんな表現がある。
「産業界は絞り切ったタオル」というのだ。
その意味するところは可能な限りの省エネは一応完了ということである。
さらに翻訳すればコストに見合う省エネは終わったということができようか。
それは当然のことで、ふたつの石油危機で産業界は燃料費の増大に苦しみ、省エネが経営の目標のひとつになったからである。
省エネは仕事だった。
日本の産業界が白らを省エネ優等生というのもこのためだ。
事実、産業部門の消費が全体として横、はいだったのに比べて、民生用と運輸部門は着実に増加傾向をたどる。
生活の向上、それに物流の増大などが背景にある。
こうして見てくると、今後の省エネのカギは民生用と運輸部門を軸に、産業部門がこれをさらに努力を重ねてサポートするという形にならざるをえないだろう。
だがこの両部門ともに問題山積みだ。
それでも多くのアイデアが進行中だ。
住宅でいえば断熱住宅の開発・普及、太陽光発電によるエネルギー自給住宅、運輸部門ではハイブリッド・カー、電気自動市、天然ガス車などの普及。
さらには小型車の見直しといったことが今、積極的に進められ、一部がすでに実現しているケースも少なくない。
さらにはライフスタイルの変更も求められてきている。
笑われて消えていった省エネ・ルックだが、これについても見直し機運が高まってきているし、サマータイムの導入も動き出している。
細かい点では待機電力を使う機器への改善要求も出てきているし、安い夜間電力使用による冷房対策なども積極的に推進されている。
あらゆることを実行していこうという姿勢であることはまちがいないのだが、これを具体的に実行、かつ効果を上げるということは至難の技といっていい。
通産省首脳がことあるごとに発信しているように、これは「平時における石油危機」を意味する。
エネルギーは産業の基盤でもあるが、生活の利便性のベースでもある。
自家用車をやめて公共交通機関を使おうという主張に納得しても実行する人はほとんどいない。
ガソリンの安値販売をエネルギー多消費になると疑問視する人も少ないだろう。
これが現実というものである。
産業界は省エネが利益に結び付くからこそ帰山命に取り組むが、一般消費者に今、ライフスタイルを変更してまで省エネを優先させるという姿勢がどこまであるだろうか。
本格的な省エネ取り組みには相当の時間と努力が必要に思える。
二つの点を電源、需要とすれば、送電網が線にあたる。
しかし、送電は電柱などを通じて身近な存在であるにもかかわらず、大きな関心が持たれることはまずないのが実情だ。
しかし、実際にはこの送電という機能があって、初めて発電・消費が成立する。
この縁の下の力持ちといってもいい、送電網の現状をエネルギー問題の側面から考えてみた。
NATO箪によるユーゴ空爆があったという記憶はまだ残っているだろうが、.油備蓄に続き、発電設備への攻撃があったことをどれだけの人が記憶に止めているだろうか。
それもソフト爆弾という特殊な爆弾で、炭素繊維を使い、電気をショートさせ、物理的な破壊をせずに、発電機能を麻市押させるというものだった。
首都ベオグラードを中心に大停電が発生したとされる。
電力が生命科であることはあの阪神大震災の際にも証明されたが、改めてユーゴ空爆がそれを立証してくれた形だ。
この生命線である電気だが、その運搬役ともいえる役割を果たしているのが送電網となる。
まるで体の中の血管のように全国隅々まで張り巡らされた送電網だが、そのひとつの大きな課題が送電の効率にある。
戦後の間もない時期、電力需要は現在の約十分の一程度で、送電の電圧は最高でも十五万四千ボルトだった。
水力発電を中心にした電源と消費地の距離が近く、「オラが町の発電所」で間にあっていたのだ。
ところが電力需要は高度経済成長と並行して右肩上がりに伸びる一方、電源立地は消費地から遠くなるばかり。
このため、それまでの電圧では安定供給に支障が生じかねない状況になり、水道管の水漏れと同じような送電ロスの改善も進まなくなる。
電気には電圧に反比例して抵抗が減るとともに、それに比例して安定度が高まるという性質がある。
送電は高圧化へ動き出し、一九五二年に登場したのが二十七万五千ボルトの高圧送電。
目下、日本の基幹送電網は約七五%が十五万四千ボルト、そして約一五%がこの二十七万五千ボルトという構成で、現在はこれに五十万ボルト送電が加わってきている。
この五十万ボルト送電が実現したのは、偶然だが七三年の石油危機の年だった。
この五十万ボルト送電は北海道電力と沖縄電力を除く電力八社で採用されており、その延長距離はざっと六千キロにも達している。
これはET大阪間五往復半程度に相当する。
高圧送電はさらに進み、目下の目標は百万ボルト送電で、すでにその態勢は整っている。
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